3.黒き女将の宿 ぶらん。ぶらん。風吹きや ぶらん。踊るよ、黒いぶらんこ・・・・。 おらは貧しい村に生まれ いっつも腹を空かせてた お菓子で出来た家があったら あったら本当に良かんべな 「人は信仰によってのみ救われる」と 偉い坊さんが言ったとさ 本っていうのに書いたとさ 神様が助けてくれるなら たらふく飯食えっべな お父達は鎌を手に 出掛けて行った その日の空の色 哀しい程に朱く・・・・ 大砲が吼えりゃ 「翼もないのに」 人が空を飛ぶ 「軽やかに高く」 戦争とは名ばかりの 唯の殺戮さ 嗚呼 武器が農具じゃ 「残念だけれど」 射程が短か過ぎた 「残酷な程に」 戦争とは名ばかりの 唯の殺戮さ 村の働き手は 結局その殆どが 二度とは帰ってこなかった・・・・ 「そしておらは、遠くの町へと・・・・」 年齢不詳。性別も不詳。出遇えば不詳。正に人生の負傷。 胡散臭い女将が、夜な夜な暗躍する宿屋。 その名を【黒狐亭】という! 「薹が立って久しい、クソババアが独り。 図太く生きてゆくには、綺麗事ばかりじゃ・・・・ないわよっ!」 「愛した男は、皆儚く散った。 運が悪いのか、時代が悪いのか・・・・」 「嗚呼 [Miintzer] は気高く、 [Hutten] は華麗で [Sichingen] は、嗚呼、誰よりも___」 「激しかったわ」 「おい、クソババア!」 「あんたのような田舎っぺ、拾ってやったのは、何処の誰かしら? 口の利き方にゃ・・・・気をつけなさいっ!」 「さぁさ、旦那、どうぞ。温い麦酒は如何? 自慢の最高な肝臓料理、ご用意致しま___」 宵闇へ 飛び出した 女将を睨み 客は怒り おらは平謝り そして小一時間後・・・ 空気読まず 出戻った 女将の手には 贖罪の 新鮮な食材 その味に 怒り狂った客も 機嫌を直した その事で 味を占めた女将の 暴走は続く・・・・ 「必死に生きたけど、ロクなことがねぇ。 結局、人生って何だべ・・・よく分かんねぇ・・・・」          とん      とん       とん   とん  とん    とん  とん      とん       とん   とん            とん とん  とん        とん  とん   とん   とん   とん  とん         踊るよ黒い       ぶ  ら  ん  こ