6.薔薇の塔で眠る姫君 微睡みの森に踊る 百の孤独と 月影に蝶は朽ちて 死の夢を見る 【七つの罪科】 野ばらに抱かれて 眠る理由は___ 水浴びて妃が聴いたのは 身籠り告げし 蛙の声 「お望みの御子が、一年経たずに、お生まれになるでしょう」 歓びて王が催したのは 姫の誕生 祝う宴 黄金の皿が 一枚足りずに 事件は起こってしまった・・・・ 【七つの罪科】 恋も知らずに 死せる処女が 野ばらに抱かれて 眠る理由は___ 「国中に散らばる、神通力を持つ賢女達を全て、招いておきながら・・・・ 私だけ招かぬ傲慢なる王よ。祝いの宴席に呪いを添えてやろう!」 「姫が抱く運命。僅か余命十五年。 紡錘にさされて、床に倒れて、死ぬがいい!」 「いいえ___」 「《十三人目の賢女》よ。不吉な言の葉、退けよう。 百年。死んだと見せて、寝台の上、唯、眠るだけ!」 「ならば、どちらの力が、嗚呼、流る時のみぞ識る・・・・     上回っているか、                」 朝と夜は繰り返す。 望もうとも、望まざろうとも。 光陰は矢の如く過ぎ去り、大樹にも幾つかの年輪を刻む。 齢十五の朝を迎えることとなった、そんな私が・・・・。 【七つの大罪】 野ばらに抱かれて 眠る理由は___ 燭台の揺れる焔 仄昏い闇を照らす 石壁の部屋を廻り 古い塔へ上がる 狭い螺旋型の階段を上ると 部屋の中 独り 老婆が麻を紡いでいた 「こんにちは、お婆さん。ここで何してるの?」         「糸を取っておりますのじゃ」 「じゃあ、それなぁに?面白そうに、ぐるぐる跳ね回ってる物!?」 僕の理想の花嫁は 何処に居るのだろう? 嗚呼 西も東も 北も南も 雨にも負けず 風にも負けず 捜したけれど 見つからない・・・・と思ってた矢先に 素晴らしい 噂を聞いた___ 〜野ばらの生垣に 抱かれた白亜の城     空を望む薔薇の塔 眠る美しい姫君〜 嗚呼 唯 野ばら姫の伝説を 聞いただけで 運命 感じた 彼女こそが きっと僕の《捜し求めていた女性》 なのだろう ならば どんな困難も乗り越えてみせよう! 迷いの森の 霧が晴れてゆく 僕を誘ってくれるのか?愛しい姫のもとへ 棘の生垣が 口を開けてゆく 僕を導いてくれるのか?愛しい彼女のもとへと___ 燭台の揺れる焔、微睡んだ闇を照らす。 石壁の部屋を飛ばし、古い塔へ上がる。 狭い螺旋型の階段を上ると___ 部屋の中、独り、乙女が横臥っていた・・・・。 予定調和な王子の接吻で姫が目覚めると、 役割を終えた野ばらは、立ち所に立ち枯れて朽ち果て、 長すぎる午睡を貪っていた城の愉快な面々も、 何事も無かったかのように、彼等の愉快な日常を再開した。 【七つの罪科】 気高き王女を呪うなんて 傲慢なのはお前の方よ! ___そして彼女は、 生まれた姫を森に捨てることとなる・・・・。